2009年05月07日

〔憲法記念日の社説ウォッチング〕

〔憲法記念日の社説ウォッチング〕

「平和」と「生存権」幅広い論議目立つ


鈴木 益邦(新聞OB九条の会幹事)


憲法施行62年。憲法記念日を各紙社説・論説はどう論じているかをみました。
今年は、世界金融・経済危機の進行する中で格差と貧困が広がり、国民生活が深刻な状況にあることから、憲法25条の「社会的生存権」の危機を訴える論調が目立ちます。
また、ソマリア海賊対処で自衛隊の海外派遣が武器使用拡大と一体で強行されること、北朝鮮ロケット発射と核開発再開などもあって、憲法改正の現実先行の危機が強まり、改めて憲法前文と9条の「平和的生存権」を重視する論調が大勢を占めています。
ご存知のように、『社会的生存権』は、第二五条@すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない、というものです。『平和生存権』は、憲法前文に、〜全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する、とあります。各紙が引用して論じています。

▼9条も25条も生かす
31紙のうち19紙がこの両方を論じ、さらに7紙が25条を中心に扱い、強調していました。
「社会全体の底が抜けそうな寄る辺なき時代、再生の鍵は憲法の精神に立ち返ることだ、私たちにとっての最大のセーフティーネット(安全網)は25条だ」(新潟日報)
「日本に広がる貧困、当たり前の人権を侵されている人々が増えている。25条と正面から向き合う時代がきた」(朝日)
「生活と平和。脅かされてはならない暮らしの土台が揺さぶられている。国民一人ひとりの『生存権』が揺らいでいる。生活そのものと平和にまつわる不安が増す。平和が破壊されてしまえば最低限の暮らしを営む生存権だって保障されるはずがない」(河北)
「いま生きる手立てとして。第9条の戦争放棄と第25条の生存権、すなわち『平和』と『福祉』が一体の関係として〜憲法を活用する」(北海道)
同様に東京中日、徳島、神戸、熊本日日、南日本など多数が指摘しています。

▼9条破壊の現実先行
「イラク、アフガン支援など自衛隊の海外派遣は拡大の一途、憲法9条の歯止めに緩みをもたらした。〜事実上の戦地派遣が現実のものになった。海賊対処では海外で武器使用も一部容認する。」(岩手日報)
「憲法9条をめぐる議論は絶えず続いている。ソマリア海賊対処が成立すればまた歩みを進める。〜自衛隊派遣は抑制的であるべきだ」(山陰中央)
「危うい空気に警戒を。〜専守防衛のタガが緩んできた。自衛隊が海外に行って当たり前―国民もそんな空気に慣らされている。国際貢献を『錦の御旗』に、日本は米国の軍事戦略に協力を強め、自衛隊の海外活動がしやすくなる」(信濃毎日)
「気付かぬうちに、なし崩し的な「改正」が徐々に進められていることだ」(徳島)
「気が付けば9条は有名無実化しいつか来た道を歩んでいた。そうならないよう目を凝らさなければならない」(新潟)と各紙が注意を喚起しました。
「北朝鮮ミサイル発射に対抗する形で、専守防衛の枠を超えた敵基地攻撃論核保有論が自民党幹部からでた。核超大国・米国のオバマ大統領が核兵器廃絶の決意表明をしたばかりだ。唯一の被爆国日本は核軍縮・核不拡散のために世界をリードしていく気概が求められる」(佐賀)と強調し、政府与党の姿勢を厳しく批判しました。

▼生存権が輝きを増すよう
 「世界第二位の国内総生産を誇る国で『貧困ライン』以下の所得しかない人が約15%に及ぶ。働く人の3人に1人は不安定な『非正規』。貧困の原因は社会制度そのものの中にあり手当ては国の責任―という姿勢は明快だ。そこで打ち立てられたのが人間の尊厳に基づく「生存権」だった。空洞化させるな」(中国)
「自殺者が再び増加傾向にある。〜世界有数の経済大国が自殺死亡率の高い有数の国でもあるのは憂慮すべきことだ。生存権を保障するのは国の社会的使命である」(北日本)。
山陽は「主権者とは何か」を問いかけ、『救えぬ25条の安全網の理念と現実の検証を』と呼びかけ、『国民の不断の努力で保持しなければならない』(12条)ことを強調。衆院選で『物言う主権者』として一票を行使したい、と結んでいます。

 ▼苛立つ改憲論調
 改憲4紙。読売は「国会は(憲法の)改正論議をサボタージュしている。〜ソマリア沖派遣や、北朝鮮ミサイルへの対処で、集団的自衛権の政府解釈が、自衛隊の実効的な活動を妨げている。憲法審査会を早期に始動させよ」と論じています。
産経は「(北朝鮮ミサイル発射で)国の守りの限界を突きつけられた。問題の根幹は、自衛隊を軍隊と認めず、国家の防衛を抑制してきたことにある。憲法がその限界をつくっている。〜憲法9条の改正こそ急務である」と従来の主張を繰り返しました。
北国が「思考停止から抜け出せ。憲法審査会は依然、仮眠状態が続いている。07年の参院選のトラウマも在るようだ」と嘆いてみせました。
日経は「憲法を今日的視点で。〜集団的自衛権の行使を禁じた政府憲法解釈の見直しは当然。現在ある非現実的な制約を除去すれば、活動の範囲が広がる」と憲法見直しを角度を変えて主張しています。
毎日は「もっと魅力的な日本を。〜開店休業の憲法審査会、議論を行なう態勢になっていない。閉塞感、混迷が深いなら、憲法を考えることは国の針路を考えることで有益な作業だろう。日本の安全保障は、ODA(政府開発援助)の貢献によって日本の発言力が支えられてきた面が大きい。日本のソフトパワーが問われている。」と曖昧な論調でした。

 ▼新聞は「国民と共に考える視点」を
新聞の拠り所は、国民主権者の生活に根ざし、国民と共に考える視点の筈だ。憲法の「生存権」に立ち返って考える論調に改めて期待したい。
「働く貧困層」「社会福祉の破壊」と「まず自衛隊派遣ありきの武力対応」「九条破壊」は単なる懸念ではない。いずれも「生存権」を破壊するものであることは明らかだ。この憲法の理念に反した舵取りをしてきた政治の責任は厳しく糾弾されねばならない。憲法擁護義務を持つ公権力の無責任を批判し、政治の大転換がもとめられる。時は衆院選間近し、政治の転換期を迎えている。新聞論調が、この面で曖昧さと幻想を与えるものであってはならないし、国民的論議を喚起する勇気ある提案者になってほしい。
さらに新聞が、世界の国民一人ひとりの「平和的生存権」を脅かす戦争を放棄し反対する憲法、紛争を軍事によらず、平和的に解決する日本憲法の立場を堅持して、幅広く国民の知恵の結集と連帯に心を砕いてもらいたい。
posted by マスコミ9条の会 at 06:54| Comment(1) | 憲法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お尋ねします。
今回の小沢さんの天皇陛下の政治利用は危険ではありませんか?
つまり、今後「天皇は軍事大国を望んでいるはず」と
小沢論法を使えばいつでも
軍事大国になれるチャンスがあるということではないでしょうか?
政治利用で過去に日本は大変な歴史を歩みました。
これらを黙認するのでしょうか?
もし、九条の会のみなさまが黙っているのなら
私はこの会を軽蔑します。
それならば今まで権力と権威をしっかり分けてきた
保守の方のほうが正論であると同時に
支持しなければいけません。
この政治利用は軍国主義に繋がるのではないですか?
お返事をお聞かせください。
Posted by at 2009年12月21日 17:51
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

マスコミ9条の会ブログ