放射能に「安全な量などない」
オーストラリア人医師の告発・ニューヨークタイムズ
(2011.05.02 01:20 中鬼 http://onihutari.blog60.fc2.com/)
ニューヨークタイムズ(2011年4月30日)掲載
http://www.nytimes.com/2011/05/01/opinion/01caldicott.html?_r=3
「安全な量などない」(Unsafe At Any Dose)
by ヘレン・コルディコット医師(Founder of Physicians for Social Responsibility and Author of“Nuclear Power Is Not the Answer”)
6週間前に初めて日本の福島第一原発の原子炉の損傷を聞いたときに、私は一つの事を確信しました。
格納容器や燃料プールが一つでも爆発を起こせば、北半球全体で癌の新しい発症率が何百万も増加するのだ、と。
原発推進派はこれを否定するでしょう。先週おこなわれたチェルノブイリ事故25周年の集まりでも、「犠牲者はほとんどいなかったし生存者の子供たちに関しても遺伝的異常が見つかるケースはほとんどない」と何人もの人達が言っていました。石炭燃料に比べて原子力は安全だとか、福島近辺に住んでいる人達の健康についての楽観的予測も、そのような観点から簡単に導き出しているのです。
私のようにきちんと状況を理解している医者達にとっては、これはとてつもなく酷い情報で何の根拠もない議論だとすぐに分かります。チェルノブイリ事故の犠牲者の人数に関しては大きな議論がずっとなされています。International Atomic Energy Agency (IAEA)は約4,000人があの事故が原因で癌を発病して亡くなっていると発表をしていますが、2009年にNew York Academy of Scienceのリポートでは、約100万人の人達が事故の影響で癌やそれ以外の病気にかかって亡くなっているという結論をだしています。更に、高濃度放射能の放出によってどれだけの流産が起きたかについては、遺伝子を破壊された胎児の人数を知ることはできないのでその犠牲は数に入っていません(ベラルーシやウクライナでは奇形で生まれた多くの子供達が施設に住んでいます)。
原子力事故は決して終わりがないのです。チェルノブイリ事故の放射能汚染による影響は、何十年もしくは何世代も時間がたたないと全貌を理解することができないのです。
広島と長崎のケースから分かるように、癌の発病は何年もの時間がかかります。白血病は5から10年ですが、癌となると15から60年かかったりします。更に、放射能が関係する変異体は劣性的に起こります。つまり、二つの劣性遺伝によって特殊な病気をもった子供が産まれるまでには何世代も時間がかかったりするのです。特殊な病気とは、私の専門である嚢胞性繊維症などのことです。要するに、私たちはこれからの将来にチェルノブイリや福島の事故で拡散された放射性物質によってどれくらいの癌や他の病気が発病されるのかまったく分からない状態なのです。
医者達はこのような危険な状況を理解しています。私たちは白血病から子供達を救うために、そして転移性乳癌から女性達を救うために一生懸命働いているのです。それでも、医療的観点からこのような不治の病をどうにかする唯一の方法は予防でしかないのです。そのような事から、医者達ほど原子力産業に関わる物理学者達に対して声を上げる準備ができている人達はいないでしょう。
そんな物理学者達は放射能の“許容用量”なんて事について説明をします。彼らは、原発や核実験などで拡散される放射性物質が体内にとりこまれ、小さな細胞に大量の放射能が取り込まれる体内被ばくを全く考慮に入れずに議論をするのです。原発から拡散される放射性物質にしても、医療レントゲン、宇宙、そして自然界からの放射性物質にしても、彼らは常に健康への被害の少ない体外被ばくにだけに焦点をあてるのです。
しかし、医者達は放射能に関して安全な許容量などない、また放射能は蓄積されるものであることを知っています。放射能の影響で起こる細胞変異は一般に有害なものばかりです。嚢胞性繊維症、糖尿病、フェニールケトン尿症、筋ジストロフィなどの病気を引き起こす何百もの遺伝子を私たちはもっています。現在、2600以上もの遺伝的疾患があると言われていますが、そのどれもが放射能に由来する細胞変異に関係している可能性があります。そして、私たちが人工的に拡散される放射能のレベルを引き上げていることで、これらの病気の発病率は上がっていくことでしょう。
もう何年ものあいだ、医者達に比べると原子力産業に雇われた物理学者達は少なくとも政治やマスコミの間では随分と重宝がられています。40年代のマンハッタン計画以来、このような物理学者達は簡単に国会に登場することが可能になっています。まずは国の核となる部分から準備を始め、物理学者達は核兵器を擁護するにしろ原発を擁護するにしろ、大きな力をつけていったのです。彼らは国会に堂々と入り込み国会自体を彼らの言いなりにしたのです。彼らの言う先進技術こそが全てとなり、その代償は何十年後もあとになってやっと分かるという仕組みになりました。
それに比べて医者達は国会との関係の歴史が浅く、さらに核に関する事についてはアクセスが非常に制限されています。私たちは発癌の潜伏期間や放射線生物学にまつわる研究の発展について議論をしてまわったり普段はしません。しかしその結果、放射能の長期的な健康への被害について政治家や市民の皆さんに説明をするという仕事をおろそかにしてしまっていたのです。
癌の患者さんが私たちにやってきたときに、彼らが80年代にスリーマイルアイランドの風下に住んでいたとか、放射能に汚染された牛乳から作られたハーシーズのチョコレートを食べていたかなんて質問をするのはよくない事だとされています。私たちは最初から事が起こらないように働きかけるよりも、事故が起こってからそれに対処をしようとします。しかし医者達は今こそ原子力産業に立ち向かう必要があるのです。
原子力はクリーンでもないし、持続可能でもないし、化石燃料の代替でもありません。逆に地球温暖化を促進させるものなのです。太陽、風力、地熱発電、そして省エネで私たちの電気の需要は満たすことができるのです。
昔は放射能が癌を引き起こすなど誰も考えていませんでした。マリー・キューリー(キューリー夫人)とその娘は扱っている放射性物質が自分達を殺すことになるなんて知りもしませんでした。しかし、マンハッタン計画に関わった初期の物理学者達が放射性物質の有害性を理解し始めるまではそれほど長い時間はかかりませんでした。私は個人的に彼らをよく知っています。彼らはヒロシマとナガサキで起こったことへの罪の意識から原子力の平和的利用が推進されることを常に願い続けてきましたが、結局はその逆の事が広まってしまっただけでした。
物理学者達が核の時代を始める知識を持っていたのならば、医者達はそれを終わらせるための知識と適格性を持っているのです。
<訳:中鬼> http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-46.html
☆ヘレン・コルディコットさんの著作
『核文明の恐怖 原発と核兵器(Nuclear Madness)』(高木仁三郎・阿木幸男訳、岩波現代選書)
「3号機の爆発は核爆発」:クリス・バスビー教授インタビュー和訳、米国のエンジニアも核爆発説を支持
http://www.youtube.com/watch?v=x-3Kf4JakWI&feature=player_embedded
司会:今世紀最悪ものとなった福島の事故について、バスビー教授、お越し頂きありがとうございます。まず、あまり広くメディアで浸透していない議論なのですが、福島で起こった爆発の一つが実は水素爆発ではなく、原子炉の一つ(※3号機)での核反応が原因だったというのがあります。もしもそれが真実だったとしたら、まさか東電はそんな重大な事故を隠蔽したりはしませんよね?
バスビー教授:私は東電がそれを隠蔽するということはあり得ると思っています。原子力産業が二枚舌を使うことや隠蔽をすることは歴史的に常に続いていることです。いつでも彼らは情報を自分達の都合の良いように変えてしまいます。私はおそらく核爆発があったと考えていますが、それは原子炉容器の方ではなく、使用済み燃料タンクでの爆発だと思います。プルトニウムやMOX燃料が含まれているタンクですね。あのすごい煙を上げた爆発をビデオで見た人は、誰もがそれが水素爆発であるはずがないと思ったはずです。
司会:水素爆発ではなくて核爆発だったとしたら、それはどのような意味をもつのですか?
バスビー教授:大きく変わるわけではないですが、問題となるのは、爆発と同時に膨大な放射性燃料が蒸発して拡散していまったということです。だから周りは非常に高い放射能濃度になっていることでしょう。またメルトダウンの問題がありますね。そしてまだ核分裂し続けていると我々は理解しています。もしかしたら容器自体に裂け目があるのかもしれません。一日に100テラベクレルの放射性物質が放出されているのです。これは本当に深刻な問題です。チェルノブイリも核爆発でした。数週間前にベルリンで報告されていますが、キセノンの同位体の測定量からして、今回のも水素爆発ではなく核爆発であるということが示されています。
司会:多くの人たちがチェルノブイリと福島第一は比較できないと言っています。その中であなたはずっと福島第一がチェルノブイリよりも悪い状況になると言っていました。現在でも同じ見解をお持ちですか?
バスビー教授:はい、そうです。とても悪い状況になる可能性があると思っています。その理由は、チェルノブイリに比べて福島第一の現状は制御されていないのです。旧ソ連はできる限り素早い行動で制御することに努めました。日本は随分とリラックスした対応をしていると言わざるを得ません。まず避難勧告が緩い。まだ多くの人たちが避難すべき場所に残っていますし、私の意見では最低でも60kmから70kmの範囲で避難勧告をだすべきだと思います。70km地点で高濃度放射能を計測しているのです。その量はチェルノブイリの避難区域の数値より高いんです。東京やその南部の地域でも高い放射能が検出されていることから、チェルノブイリに比べてとても多くの人たちがリスクにさらされているのです。チェルノブイリの時は、風が北に向いたために首都のキエフに放射能の汚染があまり広がりませんでした。要するに影響を受ける人の数が全然違うということです。ベルリン(の国際会議)で発表したECRRのリスクモデルを使った計算方式によると、チェルノブイリ事故が原因で癌になった人の数は140万人でした。我々はほぼ同数の人たちが福島第一の件で癌を発病するであろうとみています。
司会:幾つものメディアで『長期的な健康被害はまだ分からない、しかし一般的に人間へのリスクは低いとみられている。』『福島第一での放射能汚染による健康被害は確認されていない。』というような事を聞きます。これはまだこうした判断をするには時期尚早ということなのか、それともあなた自身が過剰に反応をしているのかなどと言いそうな人もいそうですよね。
バスビー教授:時期尚早というわけではありません。チェルノブイリに関して言えば、疫学的に癌発病率の増加など様々な研究がなされています。歴史を無視する人たちがそれを繰り返してしまうのです。こういう話を軽視するのは、ほとんどが原子力産業の人たちです。多額の利権が絡んでますから。
司会:日本政府は9ヵ月で事態を収拾できるとしていますよね。冷却をさせて放射能の漏出を止める。あなたはそれが可能だと思いますか?
バスビー教授:すみません。イアフォンに問題があるみたい。
司会:日本政府が特別なカバーをかけたり、冷却を成功させたり、放射能の漏出を止めるなどして9ヵ月で事態の収拾をはかるとしていますが、あなたはそれが現実的だと思いますか?
バスビー教授:たぶん無理でしょう。そのカバーをかけたとしても、地下から放射性物質は漏れて海水に流れでるし、核分裂を起こしている原子炉にコンクリートをかけても封じ込め(石棺)なんてできないんです。
司会:最後に、海水への漏出の事がでてきたのでそれについて。チェルノブイリは陸地にあって、福島第一は海に面している。これは汚染が日本を離れて広範囲に広がるという観点からどのような意味をもつのでしょう?
バスビー教授:もうすでにアメリカでは放射性物質が検出されてますよ。ウランもプルトニウムもハワイやマリアナ諸島のエアーフィルターから数値がでています。さらに汚染された海水も海岸に届きますね。だからこれはとても深刻な問題だと言っているのです。しかし日本政府や原子力産業によって一連の事は軽視されています。とっても深刻なことなんですよ。この為に多くの人たちが病気にかかって亡くなってしまうのですから。
司会:バスビー教授、興味深いお話しをどうもありがとうございました。
<訳:中鬼>
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アーノルド・ガンダーセン氏(Arnold Gundersen):米国の元原子力産業エンジニア・幹部で現在はエネルギー問題専門家・コンサルタント・教員(Fairewindsより)
http://www.youtube.com/watch?v=_1DjDc6FnhM&feature=player_embedded
すでに和訳をつけてくれた人がいるのでここに載せてもらいます。
ガンダーセン氏も3号機使用済み燃料プールでの再臨界・核反応による爆発説を支持しています。さらにガンダーセン氏は米軍が採取した大気中のキセノン同位体の比率が分かれば証拠がつかめると指摘しています。
http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-45.html







