2016年03月05日

国家主権の侵害許すTPP・ISD条項

戸塚章介さんのブログ「明日へのうた」より転載
http://blogs.yahoo.co.jp/shosuke765
労働運動は社会の米・野菜・肉だ。
2016年03月05日
国家主権の侵害許すTPP・ISD条項

■戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)


 TPP交渉の「大筋合意」から5ヵ月、アメリカの大統領候補は全員が批准反対を表明しており、今後の成り行きは流動的だ。労組などの反対運動も活発だ。一方日本では担当大臣の甘利某の失脚で一定の困難に突き当たったが、石原無能大臣のけつを叩いて批准のための国内法整備を急がせる構えだ。

 TPPは日本農業への影響が大きいがそれだけではない。医療分野や雇用関係、保険や金融にも影響は及ぶ。おれは例の「著作権侵害行為の非申告罪化」という形で言論・文化も危機に立たされると思っている。それと司法。投資家対国家紛争解決(ISD)条項によって国家主権も脅かされるのではないか。

 本5日付『赤旗』で弁護士の岩月浩二さんが「基準は外国企業の利益」とISD条項に警鐘を鳴らしている。メディアがあんまり取り上げないISD条項について鋭く迫った貴重な記事だ。

 「ISDの裁判は投資家の利益を害するかどうかというほとんど単一の基準で裁かれます。国の司法権を侵害して海外の仲裁廷で裁く特権を外国投資家に与えます」「例えば日本では、解雇権の乱用になる場合、解雇を無効とする法理があります。外国企業による解雇に対して労働者が訴えを起こしても、最高裁判決をISDに基いて仲裁廷で裁くことができます」。外国投資家に治外法権が与えられるのだ。

 おれは都労委委員現職当時、マスコミや金融の外資系企業の不当労働行為事件をいくつも担当してきた。「解雇規制の日本の法律は無視する」と広言してはばからない外資経営者もいた。ISDはそいつらを援護し武器を与える。日本の法秩序が根底から揺るがされる危険があるのだ。

 ISDの仲裁廷はどんな仕組みで運営されるのか。「ISDでは紛争のたびに3人の仲裁人を選任し判断を委ねます。提訴した外国投資家が1人、訴えられた政府が1人を選任し、残る1人は両者の合意によって選びます。3人が出した結論には当事者は従わなければなりません」。

 問題はその仲裁人だ。ことは外国投資家との紛争なのでその辺の事情に詳しくなければならない。そんな理由からほとんどが国際的なビジネス弁護士になってしまう。この国際的なビジネス弁護士というのが曲者で、企業利益のためなら国家主権の侵害などつゆほども気に留めない。おれはそういったたぐいのビジネス弁護士にしばしばお目にかかったことがある。あいつらにだけは日本を滅茶苦茶にされたくない。

posted by マスコミ9条の会 at 22:09| Comment(0) | 労働運動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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