2017年08月10日

9条(戦争放棄、交戦権否認、戦力不保持)に「自衛隊」? 日本をどうする気?

JCJ・マスコミ9条の会講演会
9条(戦争放棄、交戦権否認、戦力不保持)に「自衛隊」? 日本をどうする気?
安倍改憲の、非核という国是への影響。9条に自衛隊項目をくわえる矛盾。
講師:太田昌克さん(共同通信編集委員・論説委員)
   白神優理子さん(弁護士)  
  
日時:9月2日(土)午後1時30分から午後4時30分まで
場所:文京区男女平等センター研修室A(文京区本郷4丁目8−3)
参加費:1000円(学生500円)
20170902.jpg

※くわしくはPDFをご参考ください。
20170902.pdf
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2017年05月31日

『日本国憲法はこうして生まれた』(川村俊夫著、本の泉社刊) 

17年03月29日
『日本国憲法はこうして生まれた』(川村俊夫著、本の泉社刊) 

■坂本陸郎(JCJ運営委員;広告支部会員)

 この標題の著書には、施行70年となる日本国憲法の原点ともいえる憲法制定過程が詳しく書かれている。その中からいくつかを要約して取り出してみる。
※()内は筆者。


世界から見た日本国憲法
 まず、世界が現在の日本国憲法をどう見ているのかについて。188カ国の憲法を比較検討したワシントン大学のデービット・ロー、シカゴ大学のトム・ギンズバーグら米国法学者の見解、
 世界から見ると、日本の憲法の最大の特徴は、改正されず手つかずで、生き続けてきた長さだ。だからといって内容が古びているわけではない。むしろ逆で、世界がいま主流になった人権の上位10項目までを、すべて満たす先進ぶりである(朝日新聞2013年5月5日付)
 この評価について、著者川村俊夫氏は次のように解説している。
― ここでいう「世界でいま主流になった人権」とは、信教の自由、報道・出版の自由、プライバシー権、女性の権利、団結権、教育を受ける権利等々、近代社会になって以来、各国憲法に共通してふくまれている一人ひとりの人権です。この中で、上位20位までのランキングで日本憲法に含まれていないのは20番目の「推定無罪」だけとのことです。これに、第二次大戦後の各国憲法が持つことになった平和条項の比較を加えれば、徹底した戦争放棄の条項を持つ日本国憲法の先駆性・先進性はいっそう際立っているといえるでしょう。―
 (このような、日本国憲法にたいする客観的評価と理解は、政権による改憲策動が強まる現在、極めて重要である。憲法が米国の占領下の時代につくられたことのみを根拠として、「連合国総司令部の、憲法も国際法も全く知らない素人たちが作り上げたシロモノ」と理解する安倍首相の目が、いかに曇ったものであり、その理解が一知半解であることが、この著書を読めば理解されるだろう)

その制定過程と歴史的背景
 著者は憲法制定過程について、次のような歴史的背景を述べている。(以下は筆者による要約)

1.天皇を中心の「国体」に全く手を付けない「松本委員会案」(日本政府案)に代えて、GHQは、草案として国民主権の原則を打ち出した。しかし、あくまで「国体」の維持に固執する日本政府は、これに抵抗し、天皇制を「国民至高の意志」と言い換えるなど、天皇主権にこだわった。それに対して「国民主権」を明記せよ、という世論が沸き起こった。
2.アメリカ政府とその出先機関GHQは、反フアッショ連合国の一員としての立場から、日本政府によるポツダム宣言の実施を監視するという一面と、憲法発展の民主的歴史的到達点を取り入れながら、ソ連との対立を強めるなかで、天皇制の維持など、日本政府と妥協する一面をも持っていた。
3.日本国民は敗戦の痛手を受けながら、労働者、農民、女性、学生など階層別組織化を進め、職場、地域、学園から旧憲法体制の打破を目指すたたかいを展開した。それらは明治期の自由民権運動、大正デモクラシーなどの伝統を生かそうとするものだった。


 戦後における憲法について様々な提案、提言が国民の中から出された。そのひとつが「憲法研究会」の名で知られる民間グループによるものであり、それが、現在の憲法に平和と民主主義の規定を盛り込む力となった。

1.こうした日本国民のたたかいを励ましたのが、ワシントンに置かれた連合国による極東委員会と、当時の国際世論であった。反フアシズムで戦った国々では、戦後、平和と民主主義、人権をめぐるたたかいが起こり、それらが日本国憲法制定過程に大きな影響を与えていた。


政府案と「憲法研究会」案
 GHQに「試案」として提出された日本政府憲法案は次のようなものだった。


「日本国は君主国とす」、「第二条、天皇は君主にして此の憲法の条規に依り統治権を行ふ」、「第三条、皇位は皇室典範の定むる所に依り、万世一系の皇男子孫之を継承す」。

 これは明治憲法の字句を入れ替えただけのものであり、政府内の憲法論議がどのようなものなのかをうかがわせるものだった。その「試案」をスクープした毎日新聞も、さすがに「あまりに保守的、現状維持的なものに過ぎない。失望しない者は少ない。新国家構成の経世的理想に欠けている」と論評せざるを得なかった。
 その後、GHQに提出された政府案(松本案)も、明治憲法の条文中の「神聖」という文字を「至聖」に言い換える程度で、内容は「試案」とほとんど変わらなかった。そればかりか、「公益の為必要なる役務に服する義務」という徴兵制の復活を意図する条項も含まれていた。
 だが結局は、それがGHQに受理されず、日本政府が自らポツダム宣言に基づく憲法草案をつくる能力なしと判断され、次のような「マッカーサー3原則」が提示され、国会での論議となる。
 その3原則とは、要約すると、@天皇の義務及び権能は憲法に基づき行使される。A国家の主権並びに権利として戦争を廃棄する。B日本の封建制度は廃止する、であった。
 GHQは、政府案と同時に、鈴木安蔵、高野岩三郎、杉本幸次郎、森戸辰男、室伏高信、岩淵辰雄ら民間人グループによる「憲法研究会」に関心を寄せていた。その「要綱」を見たGHQ民生局のラウエルは、それについてこのように語っている。
 「国民の権利及び義務、これらの諸条項は、権利の焦点をなすものであって、現行憲法(明治憲法)におけるそれよりも、はるかに実効的である。言論、出版、教育、芸術および宗教の自由は保障され、かつ、その他の社会的諸原則もその中に包含されており、そのすべては民主主義と両立しうるものである」「この憲法草案中に包含されている諸条項は、民主的であり、かつ承認できるものである」。
 高く評価していたのだった。その後は、この憲法草案に賛成しない高野岩三郎が個人として、「天皇制を廃し、之ニ代エテ大統領ヲ元首トスル共和制採用」といった天皇制廃止を正面から打ち出す草案を出している。
 そのほか、憲法学者稲田正次、労働運動弁護士布施辰治などが、それぞれに憲法草案を発表している。そして、政党として唯一「憲法骨子」を明らかにしたのが日本共産党であった。それについて著者は、「この時期に憲法構想を(政党として)明らかにしたのは共産党だけであったから、政府に対してはともかく、憲法研究会の高野、鈴木らに、ある程度の影響を与えたことは否めない」と、述べている。
 (天皇制をめぐる日米の思惑は違ったものの、深刻な対立とはならなかった。戦後の対日支配を構想するマッカーサーが、天皇を戦後社会にふさわしいかたちで残す方が自国の国益に役立つと判断したからだった。その日米の“つきあわせ”の結果、皇室の存続が保障され、その後の国会では、第9条をめぐる「自衛権」の論議が焦点となった。(そこでの論議と政府答弁は現在に通じるものとして興味深い)

第9条の解釈をめぐって
 第9条に関しては、国会では天皇制存続の代償として第9条は止むを得ないという受け止め方があり、それに反対する議論はなく、9条の発案者はマッカーサーではなく、幣原首相だったという議論もされた。
 吉田首相は提案趣旨説明で、第9条は「改正案における大いなる眼目」としたうえで、このように述べている。
 かかる思い切った条項は、凡そ従来の各国憲法中に稀に見るものであります。かくして日本国は、恒久の平和を念願し、その将来の平和と生存をあげて、平和を愛する世界諸国民の公正と信義に委ねんとするものであり、この高き理想をもって平和愛好国の先頭に立ち、正義の大道を踏み進んでいこうという固き決意を、国の根本法に昭示せんとするものであります(衆院本会議 6月25日)

 次は、進歩党の原夫次郎議員の自衛権についての質問に対する吉田首相の答弁である。
 「本案の規定は、直接には自衛権を否定はして居りませぬが、第9条2項に於いて一切の軍備と交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も又交戦権を放棄したものであります。従来近年の戦争の多くは自衛権の名に於いて戦はれたのであります。満州事変あり、大東亜戦争亦然りであります。今日我が国に対する疑惑は、日本は好戦国である、何時再軍備をなして復讐戦をして、世界の平和を脅かさないとも分からないということが、日本に対する大いなる疑惑であり,又誤解であります。故に我が国においては如何なる名義を以てしても交戦権は先ず第一進んで放棄する。放棄することに依って全世界の平和の確立の基礎を成す」。(吉田首相の趣旨説明は憲法前文の趣旨に沿うものである。自衛権についての答弁は、「直接には自衛権は否定はしていないが」といった点が曖昧だが、自衛権を名目とした過去の日本の戦争を反省し、交戦権と武力行使の放棄を宣言しているくだりは注目される)

「芦田修正」の顛末(要約)
 その後、国会では第9条の解釈をめぐる論議が行われ、小委員会で第9条2項冒頭が、「前項の目的を達するために」の文言に差し替えられた。その「芦田修正」の趣旨がのちに問われることになる。
 その10年後、56年3月30日付「東京新聞」が、「侵略戦争を行うための武力はこれを保持しない。しかし自衛権の行使は別であると解釈する余地を残したいとの念頭から出たものであった」とする芦田名の寄稿文を掲載した。その寄稿文の中で、芦田は「第9条の修正案を小委員会に提出した趣旨については、その日の芦田日記にも書いてある」とも書いていた。ところが、86年に刊行された「芦田日記」には、そうした事実が書かれてなかったことから、「東京新聞」が内部調査したところ、その部分は記者の作文であったことが判明し、「東京新聞」は「おわび」の記事を掲載した。その後、さらに、米国と日本で相次いで議事録が公開された。その議事録によれば、芦田は修正の趣旨について次のように述べていた。

 『国際平和を誠実に希求し』という言葉を両方の文節に置くべきですが、そのような繰り返しを避けるために『前項の目的を達するために』という言葉を置くことになります。つまり、両方の文節でも日本国民の世界平和に貢献したいという願望を表すものとして意図されているのです(憲法改正小委員会第6回議事録46年7月31日)

(この「芦田修正」を根拠として、自衛のための武力行使は憲法に違反しないとするのが政府側の解釈である。それは、1項を、侵略戦争のみを指すと解釈し、2項をそれとは区別し、それにより、憲法上許されるとするものだが、議事録では、芦田が1項冒頭の文言の「繰り返しを避けるために」、2項で「前項の目的を達するために」と言い換えたことを明らかにしている。そのうえで、さらに1項と2項について、「両方の分節」が日本国民の「願望」を表す意図であったと語っている。つまり、2項は1項の具体的帰結であり、両項は不可分であることを、芦田は強調しているのである。したがって、自衛のための戦力、武力行使を合憲とする政府解釈は到底成り立たないことになる。この芦田自身が残した記録は、憲法を正しく解釈するうえでの確かな証拠資料と言えるだろう)。
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2013年12月12日

「1票の格差4・77倍」に違憲状態の判決相次ぐ

100人会 違憲判決 13・12・11                        

「1票の格差4・77倍」に違憲状態の判決相次ぐ       池田龍夫

 「1票の格差」が最大4・77倍だった今年7月の参院選を無効として、弁護士グループが全国で選挙無効を求めた訴訟で、札幌高裁(山崎勉裁判長)は12月6日、「違憲状態」との判断を下した。
議員1人当たりの有権者数は最小の鳥取県に比べ北海道が最多で、4・77倍。これをめぐって、11月28日には広島高裁岡山支部が「違憲・無効」の厳しい判決を下した。12月5日には広島高裁が「違憲状態」と判断。今のところ「無効請求」を、札幌・広島両高裁は棄却している。
 北海道新聞12月8日付社説は「議員1人当たりの有権者数が最も少ない鳥取県の1票の価値を1とした場合、北海道は0・21でしかない。法の下の平等という民主主義の根幹がないがしろにされ続けている状態は異常だ。最高裁はこれまで、2007年の参院選に対しては『合憲』としながらも、『大きな不平等が存在する』と指摘し、制度見直しに言及した。
最大5倍の格差があった10年の前回選挙には、「違憲状態」を突きつけた。だが、国会が対応したのは、大阪府と神奈川県を2増とするなどの4増4減だけだ。その結果、7月の参院選は1票の価値が最も小さい選挙区が神奈川県から北海道に変わったにすぎない。
 衆院でも人口最少の宮城5区に対し、北海道1区が2倍超になるなど見直しは急務だが、国会の動きは鈍い。 国会議員に期待できないのであれば、衆参両院ともに第三者機関が主導して、改革を推進すべきだ」と、厳しく批判していた。
 今後も同種の判決が予想される。選挙制度を抜本的に改革できない国会に対する司法からの厳しい警告にほかならない。絶対多数の自民党政権は「秘密保護法」に莫大なエネルギーを割いたが、自分たちの議席に関する問題には実に不熱心だ。16年の次回参院選挙までの改革を目指して、根本から立て直すべきだ。
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
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2010年06月09日

2010年・全国の新聞社説・論説における憲法論調の主な特徴

2010年・全国の新聞社説・論説における憲法論調の主な特徴


桂 敬一(マスコミ九条の会呼びかけ人)


今年最大の着眼点は「普天間」「日米安保」

 今年、2010年のこの憲法論調分析(結果は別表参照)は、昨夏の総選挙で誕生した民主党政権の下では、初めてのものだ。9条改憲を党是として標榜してきた自民党政権と比べ、民主党連合政権は改憲に関する方針を明確にしていない。これに対して新聞全体の論調動向はどのようなものとなるのか、気になった。

 連立政権の憲法政策が曖昧なため、各紙の憲法論調の護憲性・改憲性の判断に当たっては、つぎの2点を主な拠りどころとした。第1は、現行9条の規定順守を促す文言や、それを生かせとするメッセージの有無だ。ただ、平和的生存権(25条)の重視を謳うものなども、9条護憲の範疇に含めた。第2に、すでに「普天間問題」が重要な争点として浮上しており、これに関連して日米安保の見直しを求める声も大きくなっていたので、これらの問題への触れ方を重視した。自民党時代の日米合意どおりの沖縄県内の基地の移設は、在日米軍再編・日米軍事一体化の方向を強化し、既成事実化するので、日本の防衛を主眼とする安保を変質させ、気付かぬ間にアメリカとの集団的自衛権を成立させ、解釈改憲の幅を後戻りできないほど広げるおそれがある。そこで、そうした方向を主導するか黙認する主張は9条改憲に、これに反対する主張は護憲に、それぞれ区分した。

 調査結果は、これまでとは異なる興味深い傾向を示すが、その紹介の前に、改憲の是非やその内容の可否が新聞のうえで大きな問題となるに至った、およそ10年間の政治情勢の変化を、あらかじめ振り返り、概観しておきたい。

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2009年05月07日

〔憲法記念日の社説ウォッチング〕

〔憲法記念日の社説ウォッチング〕

「平和」と「生存権」幅広い論議目立つ


鈴木 益邦(新聞OB九条の会幹事)


憲法施行62年。憲法記念日を各紙社説・論説はどう論じているかをみました。
今年は、世界金融・経済危機の進行する中で格差と貧困が広がり、国民生活が深刻な状況にあることから、憲法25条の「社会的生存権」の危機を訴える論調が目立ちます。
また、ソマリア海賊対処で自衛隊の海外派遣が武器使用拡大と一体で強行されること、北朝鮮ロケット発射と核開発再開などもあって、憲法改正の現実先行の危機が強まり、改めて憲法前文と9条の「平和的生存権」を重視する論調が大勢を占めています。
ご存知のように、『社会的生存権』は、第二五条@すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない、というものです。『平和生存権』は、憲法前文に、〜全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する、とあります。各紙が引用して論じています。

▼9条も25条も生かす
31紙のうち19紙がこの両方を論じ、さらに7紙が25条を中心に扱い、強調していました。
「社会全体の底が抜けそうな寄る辺なき時代、再生の鍵は憲法の精神に立ち返ることだ、私たちにとっての最大のセーフティーネット(安全網)は25条だ」(新潟日報)
「日本に広がる貧困、当たり前の人権を侵されている人々が増えている。25条と正面から向き合う時代がきた」(朝日)
「生活と平和。脅かされてはならない暮らしの土台が揺さぶられている。国民一人ひとりの『生存権』が揺らいでいる。生活そのものと平和にまつわる不安が増す。平和が破壊されてしまえば最低限の暮らしを営む生存権だって保障されるはずがない」(河北)
「いま生きる手立てとして。第9条の戦争放棄と第25条の生存権、すなわち『平和』と『福祉』が一体の関係として〜憲法を活用する」(北海道)
同様に東京中日、徳島、神戸、熊本日日、南日本など多数が指摘しています。

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2009年03月25日

ソマリア沖自衛隊派兵

ソマリア沖自衛隊派兵


弁護士 島田修一(旬報法律事務所)


3月13日、麻生内閣は自衛隊に対し自衛隊法82条の「海上警備行動」を発令し、同時に「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」案を国会に提出した。発令を受けて翌14日、海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」が1万2000キロ離れたソマリア沖へ向けて呉港を出発した。いずれも5千トン級の護衛艦で、2隻に自衛官4百名、海上保安官8名、海自の特殊部隊「特別警備隊」が乗り込み、哨戒ヘリ4機も搭載。「テロ」対策を口実にインド洋とイラクに自衛隊を派兵した自公政権は、今度は「海賊」対策の名の下に自衛隊をアフリカへ派兵した。

今回の派兵の最大の問題は、これまでの自衛隊の海外派兵の「限界」を一掃することにある。インド洋とイラクに派兵された自衛隊は、期間限定、地域限定、活動限定、武器限定のしばりを受けていた。インド洋では期間6年、戦闘行為が行われていない地域、協力支援活動・被災民救援活動、イラクは4年、戦闘行為が行われていない地域、人道復興支援活動・安全確保支援活動であり、武器の使用はインド洋でもイラクでも、「生命の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由があるとき」とされていた。活動は後方に止まって前線はダメ、武器使用は生命防護の「受動的」な場合に限定されていたのである(それでも憲法9条1項が禁ずる武力行使に該当することは名古屋高裁判決にみるとおりである)。
ところが、今度のソマリア派兵は、期間の限定はなく、世界中の公海への自衛隊派兵を認め(日本領海もしくは近海に限定されている海上警備行動を拡大解釈して派兵を先行させたうえ、海賊対策法案はソマリアと限定していない)、しかも自ら海賊を取り締まることから「前線」での活動を認め、さらにはそこでの武器使用の基準を大幅に緩和しているのである。武器使用緩和についてみると、「海上警備行動」と海賊対策法案はいずれも警察官職務執行法第7条を準用しているが、警職法第7条は警察官の武器使用を、「犯人逮捕」「逃走防止」「人の防護」「公務執行に対する抵抗の抑止」の場合に認めている。このことは、「テロ」特措法、イラク特措法における「生命の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由があるとき」と比較し、武器使用のケースを拡大させていることは明らかである。そればかりか、海賊対策法案は「海賊行為」とは何かについて、「船舶の強取」「船舶内の財物の強取」にとどまらず「船舶に著しく接近する行為」、さらには「海賊行為する目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為」にまで、その定義を広げている。つまり、海賊が民間船舶に乗り込んで船舶を強取し、財物を強取した場合はもとより、海賊が民間船舶に乗り込もうとした段階でも、それ以前の「船舶に著しく接近する行為」に対しても、さらには距離に関係なく停止発令に従わないで航行を続けている段階でも、武器使用を可能としている。「テロ」特措法、イラク特措法での武器の使用は受動的であったが、今回は海賊から発砲がなくても先行的、能動的に武器を使用することを認めているのである。しかも、派遣された護衛艦が使用する武器は機関銃・速射砲・機関砲・魚雷、哨戒ヘリの武器は機関銃・魚雷・対潜爆弾・対艦ミサイル、の大量殺戮が可能な兵器である。

1991年のペルシャ湾掃海艇派遣、また1992年PKO協力法で世界各地(カンボジア、モザンビーグ、ゴラン高原その他)に派遣された自衛隊。さらにはアメリカが実際に行っている戦争(アフガニスタン)に2001年から参加し、2004年からは「戦地」(イラク)に部隊を派兵した自衛隊。自衛隊の任務を専守防衛から海外出動へ大きく転換させるこの間の動きの連続線上に登場してきたのが、ソマリア派兵である。海賊を足がかりに後方支援、人道支援、武器限定のこれまでの制約を突破し、解釈改憲の「究極の目標」である海外派兵恒久法の制定に大きく近づけるために登場してきたのが、ソマリア派兵である。自衛隊に引き金を引かせてはならない。2度と人を殺させてはならない。海賊対策法案の成立を絶対に許さない声と運動を大きくしていくことが今、緊急に求められている。
(九条の会東京連絡会機関誌「生きいき憲法」より転載)


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2009年03月15日

自衛隊のソマリア派遣

「視角」

自衛隊のソマリア派遣


丸山重威(関東学院教授)


 麻生政権の不人気と特捜の小沢捜査が大々的に報道される陰で、議論らしい議論もなく、海上自衛隊のソマリア派遣が決まり「海賊対処法案」も閣議決定された▼まず海上警備行動で派遣、新法に切り替えるという「まず派遣ありき」の強引なやり方。期間も、法的な説明もないままの決定。メディアも、NHK「クローズアップ現代」さえ社・共両党首の言葉以外の批判はなく、浜田防衛相の説明を長々流すキャンペーンになった▼もともとは、これは海上保安庁の仕事だ。もちろん日本の周辺が中心だが、マラッカ海峡の海賊対策はインドネシア、シンガポール、マレーシアなどの沿岸警備隊とともに海保が対処したし、原発燃料輸送には巡視船が護衛した経験もある。それがルールだ▼ところが「何が何でも自衛隊派遣」の勢力は、「大連立」でこれを巧妙に進めた。昨秋の国会で民主党・長島昭久議員が海上自衛隊の派遣を「提案」、麻生首相が検討を約束。自衛隊の難色も民主党の「追い風」に飛ばされ「議論なし派遣」に至った▼一体「ソマリヤの海賊」とは何なのか? 背景はいろいろあっても、確かなことは「生活に困窮する漁民」だということ。事実上政府がない中での「海賊退治」は、民衆の生活安定以外に成り立つはずはない▼インド洋にはアフガン攻撃のための給油艦、その奥に、海賊退治の護衛艦…。随分豪勢な存在の誇示だ。一体憲法の精神はどうなったのか? ただ「日の丸を立てればいい」というものではない。「海賊退治」はオリンピックではないのだ。
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2009年03月09日

「あの日の授業−新しい憲法のはなし」― 笠木透さんの作品に寄せて

「あの日の授業−新しい憲法のはなし」― 笠木透さんの作品に寄せて


関東学院大学教授 丸山重威


あの日の先生は 輝いて見えた/大きな声で教科書を 読んでくださった
ほとんど何も 分からなかったけれど/心に刻まれた あの日の授業


 「わが大地の歌」で知られるフォークシンガー、笠木透さんのコンサート「70歳のラブソング」を聴きに行った。障碍者を支援する調布の「クッキングハウス」などの人たちが取り組んだ企画だ。会場は満員。暖かい雰囲気に包まれていた。
 会場で「私の子どもたちへ」と題した笠木さんの作品集のCDを買った。ここに紹介した「あの日の授業」は、この日は歌われなかったが、そのCDの中の一作品。日本国憲法が公布され、文部省が小、中学生に向けて副読本として作った「あたらしい憲法のはなし」の授業を歌っている。
 笠木さんは71歳を超えたというから、きっと、この授業を受けていたのだろう。3節の歌の間に、「あたらしい憲法のはなし」の朗読が入る。
「そこで、今度の憲法では日本の国が、けっして二度と戦争をしないようにと、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものはいっさい持たないということです…」
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2009年02月26日

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」

(08年11月30日 緊急学習会の講演録W)主催 マスコミ・文化 九条の会 所沢

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」


歯止めなく暴走する自衛隊をどう変えていけるのか


講師 前田哲男氏(軍事ジャーナリスト・評論家)


(前回のつづき、4回目・最終回)
■「平和基本法」は憲法理念と現実に「橋を架ける」試み

来年早々にでも総選挙があるのならば、その総選挙で対抗構想を、野党共通の安全保障政策を掲げて勝利する。オバマが「チェンジ」と言ったように、「自衛隊チェンジ」という共通の政策、スローガンを掲げて勝てば、米軍再編を止めると言えます。思いやり予算を止めると言えます。それは我々の民意ですから。オバマがイラクから撤収させると言ったように、我々は思いやり予算を止めよう、米軍再編凍結、自衛隊の縮小再編に向けた第一歩を踏み出す、こういったことを共通の政策として、マニフェストといってもいいし、政策協定といってもいいし、採択し、掲げ、それによって選挙に勝つ。アメリカといえどもそれは駄目だということはできない。不愉快な思いはするでしょうけれども、できないです。イラクに派遣したスペインが、総選挙で撤収を掲げて勝利し、公約どおりに全部引き上げました。イタリアもそうでした。フィリピンは総選挙ではないけれども、カット。アメリカは不愉快ではあるが、何も言えませんでした。ドイツとフランスはそれ以前に、そもそも派遣しませんでした。そういうこともできるのです。日本がやらなかっただけの話です。続きを読む
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2009年02月25日

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」

(08年11月30日 緊急学習会の講演録V)主催 マスコミ・文化 九条の会 所沢

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」


―歯止めなく暴走する自衛隊をどう変えていけるのか―


講師 前田哲男氏(軍事ジャーナリスト・評論家)


(前回のつづき、3回目)
■自衛隊の体質からくる問題点ー定着する九条と「日米同盟」路線との乖離ー

「新ガイドライン安保」がもたらした新分野
次に、なぜ自衛隊の中からこういう声が次々に起こってくるのか、を少し見てゆきたい。
このあたりは、ここ数年の防衛庁の防衛省昇格(06年)と「米軍再編」(05年合意)、それに至る「新ガイドライン」(97年改定)と「周辺事態法」(99年制定)さらにまた海外出動の数々(インド洋〜イラク)など、ごく最近の動きに属しますからあまり詳しい説明は不要だと思いますが、それらを貫いている情勢の中から、なぜ田母神的なものが噴出するのかということを考えると、二つの違った方向に捻じ曲げられた自衛隊という組織のきしみ、すさみのようなものが浮かびあがってくるのではないか。田母神論文にも、対米不信が見え隠れしています。
旧軍への郷愁が語られる一方で、アメリカに従属し、米軍と一体化する、基地からお金まで、さらに裁判権の不行使というような、一体化というより従属する関係が進行していく。自衛隊員にとって、自分たちの選択ではなくて政治路線によって、自分たちが対米従属に織り込まれていくという大きな外部構造がある。

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posted by マスコミ9条の会 at 07:02| Comment(0) | 憲法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月23日

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」2

(08年11月30日 緊急学習会の講演録U)主催マスコミ・文化 九条の会 所沢

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」


―歯止めなく暴走する自衛隊をどう変えていけるのか―


講師 前田哲男氏(軍事ジャーナリスト・評論家)


(前回のつづき)
“戦前の教訓”から読み解く
第2の視点は、彼らが思いを馳せる戦前の軍隊と政治の関係です。フリューシュトゥック論文にも出てきますが、それが何をもたらしたか。その結末は私たちが良く知っていますし、そこに戻りたいと誰も思うはずがないわけでしょうけれども、やはり60年以上経つと、戦前日本の政・軍関係を知らない国民、有権者が圧倒的に多くなっているので、何度でも思い返しておく必要がある。そういう意味で田母神問題の一つに、戦前の教訓から読み解く視点、伝えていく視点も持っておかなければならない。
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posted by マスコミ9条の会 at 12:37| Comment(0) | 憲法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月22日

「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」

(08年11月30日 緊急学習会の講演録T)主催 マスコミ・文化 九条の会 所沢


「自衛隊の『旧軍隊』への回帰と九条の闘いの視点」


歯止めなく暴走する自衛隊をどう変えていけるのか


講師 前田哲男氏(軍事ジャーナリスト・評論家)


ご紹介いただきました前田哲男でございます。
今日の集会は、おそらくあの田母神発言、論文に触発されて、その危機感から企画されたのだと思われます。タイトルも「旧軍隊への回帰と九条の闘い」という状況告発的な視点とこれからの運動の展望をどう構築していくかという両方の側面があるように思います。
田母神論文そのものについては皆さんももうご存知ですし、いろんな論点がメディアでも示されました。

■「田母神問題」の根源

私は、田母神航空幕僚長の発言に発する一連の動きを、「田母神論文」「田母神事件」「田母神問題」という三つの側面から考えています。今日お話するのは最後の「田母神問題」が中心になろうかと思います。
田母神論文に関しては、報道されたとおり、いろんな問題点、史実誤読が既に提起されています。あれは論文じゃない、引用だけのパッチワークみたいなものだ。こんなものを大学生が書いても受けつけられない、という形式の問題があります。田母神論文は大学生得意の「コピペ」(コピーと貼り付け)という指摘、たしかにそう思います。
内容に関しても、歴史学者・秦郁彦さんのような、体制寄りといわれているような方でも、これはお粗末、間違いだらけという言い方をされています。歴史学者の評価はすべて内容に関して真面目な論評に値しないという見方で一致しているように思います。
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posted by マスコミ9条の会 at 10:03| Comment(0) | 憲法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月01日

「憲法九条」または日本人の冒険について 〜加藤周一さんが遺したもの〜

「憲法九条」または日本人の冒険について 〜加藤周一さんが遺したもの〜

「九条」は精神の冒険

なし崩しの瞬間見逃さずに

桜井 均(元NHKプロデューサー)


「九条」の危機に抗して
今から4年半ほど前、2004年6月10日に出された《九条の会アピール》は、「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされている」という危機意識の表明から始まっている。その呼びかけ人の一人、加藤周一さんが亡くなった。加藤さんはしばしば「九条」は日本人が続けている「精神の冒険」だと語った。「九条」は、過去への反省と未来への誓約を含む国際公約であり、60年間日本人が護り続けてきた理想である。その理想を消してはならないというメッセージが「冒険」という語にこめられている。
《九条の会アピール》はこう続く、「集団的自衛権の名のもとに自衛隊の海外派兵を行うために九条を変えようとする勢力が台頭している。その地ならしに教育基本法までも変えようとしている。イラク攻撃はすでに泥沼化している」と。これらの言葉は、小泉政権が陸上自衛隊をイラク南部のサマワに派遣した04年2月8日を具体的にふまえ、安倍政権が教育基本法を変えた06年12月22日の暴挙に向けられている。
「九条」をめぐる情勢はめまぐるしく変わる。危機感と希望はいつも隣り合わせである。その隙間に、「なし崩し」改憲が忍びよる。加藤さんはその「なし崩し」の瞬間を見逃さず、あらゆる手段を講じて九条擁護の活動をつづけた。《九条の会アピール》はこう結んでいる、「あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたい」と。
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posted by マスコミ9条の会 at 15:14| Comment(0) | 憲法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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