「ポスト菅」政権は脱原発を引き継ぎ推進せよ
テレビは原発推進翼賛体制から脱却すべき
2011年8月12日 河野慎二(元日本テレビ社会部長・ジャーナリスト)
菅首相が10日の衆議院財務金融委員会で「3つの法案が成立したら、代表選を速やかに行い新代表が選ばれた時には、総理の職務を辞して、新たな総理を選ぶ段階に入る」と述べ、初めて辞任の意向を明言した。これで、東日本大震災の復興や福島原発災害の被災者対策などは二の次にして繰り広げてきた「菅降ろし」の醜態劇も幕を閉じる。
となると、気になるのは、誰がポスト菅の後釜に座るのか。それと、後継首相が菅の脱原発政策を引き継ぐのかどうかである。朝日新聞の世論調査(8日)によると、原発に依存しない社会をめざす菅の姿勢を、次の首相も「引き継いだほうがよい」と答えた人が68%に達している。ポスト菅の立候補者はこの高い数値を謙虚に受け止めねばならない。
なぜ、7割近い国民が次期政権に脱原発政策を引き継ぐよう求めるのか。言うまでもなく、東京電力の福島原発災害が収束する見通しが立っていないことへの不安、不信、怒りが背景にある。それどころか、放射能汚染が東北や北関東の食用牛にも広がり、国民の主食である新米も汚染検査の対象になるなど、被害が拡大していることも見逃せない。今後は、土壌汚染の拡大、地下水の汚染、海洋の魚貝類への汚染拡大なども懸念される。
もうひとつの背景として、ポスト菅の候補者たちが「脱原発」を否定していることへの危機感があると考えられる。菅の「原発に依存しない社会を目指す」という発言(7月13日)に対し、財務相・野田佳彦は「原発ゼロは個人の夢」、前外相・前原誠司は「脱原発はポピュリズムに走りすぎ」と切って捨てた。国民の多くは、脱原発が次期政権によって立ち消えにされると危惧し、「継承せよ」の意見が68%に達したのではないか。
脱原発を求める国民の声は、メディアの世論調査に示されている。朝日の調査(8日)では、「原発を段階的に減らし、将来やめることに賛成か」という問いに、72%が賛成と答えている。原発推進の論陣を張る読売の調査(8日)でも、菅の脱原発に賛成という答えが67%に達している。4月の同紙調査では42%だったから、4カ月で6割近く増えたことになる。NHKの調査(8日)は最も低いが、57%が「評価する」と答えている。
驚いたのは、このニュースを伝えるテレビ報道の内容だ。テレビ各局のニュースは、菅の退任表明や、代表選出馬予定者の動きを伝えるにとどまっている。肝心の代表選の争点はボツである。テレビ朝日の「報道ステーション」の報道が一つのパターンだ。まず、菅の退任意向表明をVTRで流し、「28日の代表選で新代表を選出、今月末に新首相を決める」と日程を伝える。そして立候補に意欲を見せる野田のほか、前国土交通相・馬淵澄夫、元環境相・小沢鋭仁らを報じ、「140人の議員を率いる小沢一郎がカギを握る」とまとめる。永田町の政局報道のスタイルに安住したニュースづくりである。
NHKの「時論公論」にも唖然とする。10日深夜「ポスト菅政局は」と題し、最後のコーナーで「代表選の争点」を解説した。その中で解説委員は「争点は復興増税問題」と指摘。野田を「増税派」、馬淵と小沢鋭を「増税先送り派」に区分けして「19兆円と見込まれる復興費用をどうするか」を解説し、自民党との大連立にも言及した。菅の脱原発をどう引き継ぐかには一切触れない。この解説委員は、脱原発が争点にならないと本当に考えているのか、だとすれば余りにも能天気ではないか。疑問と違和感を残した。
翌11日の新聞も前日のテレビニュースと大同小異の紙面づくりだ。朝日、毎日、東京の3紙は後述するように先月から今月にかけて、「脱原発」に社説の舵を切ったが、11日の紙面を見るとそうした大転換の姿勢が反映されていない。唯一、東京が「脱原発・増税が争点」と題して、「震災後の代表選では、国家の危機をどう乗り越えるのかが争点となる。最も注目されるのが福島第一原発事故を受けたエネルギー政策のあり方だ」「首相の『脱原発』路線をどこまで継承するのか議論になりそうだ」と指摘している。
今回の民主党代表選は通常の代表選とは根本的に異なる。それは、代表選の結果が、脱原発の行方を左右するからだ。現在の時点で菅の脱原発を引き継ぐと表明している候補者はいない。国民の大多数が脱原発の継承を求めているのに、代表選はそれに背を向けようとしている。新代表は国会で首相に指名されることが確実だから、「民主党の党内問題」として代表選を座視する訳にはいかない。脱原発の引き継ぎを最大の争点として、国民に開かれた代表選が行われるよう、声を上げる必要がある。
そのためにはメディアの掘り下げた取材が欠かせない。野田や馬淵、小沢鋭らが脱原発についてどういうスタンスで、どんな考えや政策を持っているのか、国民にはほとんど情報がない。とりわけ、原子力発電に群がって利益を貪ろうと蠢く「原子力村」との関係はどうなのかは、国民の最も知りたいところだ。メディアはこれらの点を中心に、代表選立候補者の全体像を徹底取材し、画(紙)面を通じて明らかにすべきだ。
続きを読む







