随想 2011年8月1日
原爆・原発・8月に想う
阿部敏勝(JCJ・マスコミ9条の会・会員)
T、プロローグ・昭和20年(1945年)8月9日長崎
ギラギラと照りつける太陽、流れる汗、長崎から約25キロ離れた諫早の飛行場、そこで毎日しごかれていた私でした。そして忘れもしない8月9日午前11時2分、長崎の上空500メートルでプルトニウム型原爆がさく裂、3,000〜4,000度の熱線と秒速440メートルの爆風が7万人の命を一瞬にして奪い去りました(今日迄の死亡者累計15万人以上)諫早は死傷者の収容所となり、長崎へ救援に行った人たちも被爆者となりました。
8月6日の広島に続く無差別殺戮です。反核運動「原爆許すまじ」の声が澎湃として巻き起りました。そのピークは昭和29年(1954年)にビキニ環礁で起きたマグロ漁船第5福竜丸の被爆事件です。3,200万人の署名が集まり翌昭和30年には世界初の「原水禁世界大会」が開催されました。
U、被爆そして被曝・「原子力平和利用」の虚妄
このころ米ソ冷戦の最中(さなか)にあったアメリカは世界を核のネットで支配すべく「原子力の平和的利用」戦略を打ち出し、世界最初の被爆国であり反核運動の燃えさかる日本を重要ターゲットに定め、読売新聞社主正力松太郎、少壮政治家で「核保有」に存念がある中曽根康弘などを抱き込んで「原子力平和利用博覧会」を日本各地で開くなどのPRに努め、昭和31年には原爆犠牲者の聖地広島、それもよりによって平和記念資料館で上記博覧会を開くことに成功しました(広島の参観者3週間で12万人、全国で270万人)この時被爆者を含むおおかたの日本人は「絶対安全」「資源の無い日本、経済成長に必須」などと言うアメリカと日本政府のPRを漠然と(中には積極的に)信じたのです。
その後の原子力業界、電力業界の発展ぶりに就いては申し上げる迄も無いと思いますがとにかく、度重なる重大事故を官民一体で隠蔽して「安全神話」をでっち上げ、年間15兆円以上と言われる売上げ(電気料金)と4,200億円以上の国費支出が電源三法、電事法等によって保障される独占企業として今日に到りました。
併し乍ら「技術と資源」をアメリカに頼ってきた日本の原発産業は「使用済核燃料の処理」ひとつ取ってもまゝならず、既に10トン、核兵器にして1,250発分のプルトニウム(前記長崎型原爆の原料)が滞留しており、新規原発の立地どころか使用済燃料の処理にも困っている状態です。原発はかくて「採否検討」の次元ではなく「廃止の時期及びその方法」の問題となって来ました。
V、エピローグ・原発廃止への道筋
東電福島原発大事故の収束末だしなのに原発推進派の抵抗はすさまじく、彼等は「安全と成長の両立可能」「国力を落さぬ為に原発推進を」「原発輸出は国際公約」「再生エネルギーは不安定」「原子力(含む軍事用)技術の国際的レベル維持のため」「雇用並びに地域のため」等々を叫んで居り、これに同調する者も少なくありません。
彼等の強味は何と言っても55年間に亘って築き上げて来た制度、特に前記「電源三法」並びに「電気事業法」です。日本はいわゆる法治国家ですからこれらの関係法令(全部で22あるとのこと)が有る限り、彼等の支配体制は続きカネ(予算)も出る仕組みになっているのです。
これに対し従来の反原発運動は「署名」「チラシ」「デモ」「差止め訴訟」等々で戦われて来ましたが、どちらかと言うと地域性、専門性が強く、一般市民の参加が極少でした(ある面から見ると土地交付金が欲しい地方の市町村に危険を押しつけ、都会住民は恵みだけを享受して来ました)従って国政レベルには仲々なりませんでした。
然し東電福島事故以後は違います。原発事故の恐しさ、特にその広域性、長期性を実感した国民全般が反対の声を挙げ始めたのです。
そこで「原発廃止のための道筋」ですが私は従来の「署名運動」「チラシ配布」「デモ」「民事訴訟」「行政訴訟」「住民投票」等に加えて「国民投票制度の確立」並びに「刑事告発」が今後重要な手段になると思います。
※ 特に国民投票制度並びに住民投票制度は間接民主主義、議会制民主主義の欠点を補うものとして欧米各国でも最近多用されており、原発問題の行方を決めたイタリアの国民投票制度などに勉びたいと思います。
◎ 参考資料(是非ご一読ください)
(1) 月刊「世界」平成23年8月号岩波書店
原子力平和利用とヒロシマ(田中利幸)他
(2) 岩波新書、平成23年7月刊
「原発を終わらせる」(石橋克彦編)
(3) 講談社現代新書、平成23年6月刊
「原発社会からの離脱」(宮台真司×飯田哲也)
(4) 集英社新書、平成23年8月刊(予定)
「原発」国民投票(今井一)
(5) 文春新書、平成23年6月刊
「東電帝国、その失敗の本質」(志村嘉一郎)
(6) 新潮新書、平成20年2月刊
「日本に原発を導入せよ、原発・正力・CIA」(有馬哲夫)
(7) 宝島・特集 原発の深い闇(明石昇二郎 他)
(8) 朝日新聞、平成23年7月17日〜21日
「原発国家、中曽根康弘編」
(9) 同 、同 7月22日〜 「原爆と原発」
(10) 同 、同 7月25日「米原子力PRに広島利用画策」
(11)毎日新聞、同 4月20日「原発、米国の冷戦戦略受け導入」
(12)週刊東洋経済、平成23年7月30日号
「再生エネルギーは本当に使えるのか?」
(13)毎日新聞、同 6月刊「原発文化人50人斬り」(佐高信)
(14)講談社、 同 5月刊「日本中枢の崩壊」(古賀茂明)
(以上)
posted by マスコミ9条の会 at 07:17|
Comment(2)
|
政治
|

|